もしもカモシカの子どもを見つけたら・・・
カモシカの仔は野生にもどれるか 春4〜6月は、カモシカの出産シーズンまっさかり。 毎年この時期になると、カモシカの赤ちゃんが保護されるというニュースを耳にすることが多くなります。 ご存じのようにニホンカモシカは特別天然記念物であり、個人で飼育することは禁じられています。 地域によっては収容できる保護施設や動物園などが無いこともあり、特別に飼育を許可される例もあるようですが、 1年ほど経つと「カモシカはもとの自然に返すように」と指導されるようです。 しかし、人の手で育てられた仔カモシカが厳しい自然の中で生きていけるかどうかは甚だ疑問です。 人が育てる場合、離乳後のエサとして野菜や果物を与えることが多いと思いますが、当然山や森にそんなものは ありません。 野菜などの味を覚え、さらに人にも慣れてしまったカモシカは畑や民家の近くに出てきてしまうのです。 また、本当の母親を知らず、人間が母親であると認識した仔は、自分が人間だと勘違いしているかもしれません。 保護施設で育てられたのち動物園に引き取られた雌のカモシカの仔がいますが、飼育員やお客さんには近寄って くるものの、自分のお婿さんになる予定の雄カモシカからは怖がって逃げ回ってばかりいるそうです。 このような状態でもしも山に放されていたら、いったいどうなったでしょう・・・。 「動物は自然に返したほうが幸せなんだよ」 という言葉だけで安易に片付けられる問題ではない思います。 カモシカの仔の誤った保護について −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 山歩きをしていたらカモシカの赤ちゃんをみつけました。 そばに親の姿は見えないし、赤ちゃんはひとりで座ったままです。 きっと親とはぐれてしまったんだろう、かわいそうに思って家に連れて帰りました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 毎年保護される赤ちゃんカモシカのなかにはこのような勘違いに遭ったケースも多いのです。 カモシカは基本的に決まったナワバリの範囲内で行動します。 また、母親は毎年1頭の仔を産み、しばらくの間は いつも一緒に行動します。 余程のこと(事故や外敵との遭遇等)がない限り、はぐれてしまうことはありません。 お願いです。 もしも山で赤ちゃんに出会っても、むやみに近づかないようにしてください。 必ず近くに母親のカモシカがいるはずです。 しかし、人がそばにいては自分の仔に近づけないのです。 ひどくケガをしている仔を見つけてしまった場合、このままでは死んでしまうかもしれない・・・、と思ったら誰だって 「なんとかして助けたい」と思うでしょう。 この場合についてまで必ずしも否定はできませんが・・・。 しかし、こんなこともありました。 数年前のこと。 いつも歩いているフィールド近くの知り合いが、倒れているカモシカの赤ちゃんを見つけ通報しました。 赤ちゃんは現地の役所によって保護されました。 衰弱していたため保護施設へ運ばれて治療をうけたようですが、 しかしその仔は同じ日の夜、保護した場所とは数十キロ離れた山の中にひとり置き去りにされてしまったのです。 赤ちゃんはお母さんのお乳なしでは生きられません。木の葉だけで生きていけるようになるのは数ヶ月も先のこと。 「ケガの治療をしたから山に放しました」と役所の担当者。 あまりのことに言葉を失いました・・・。 (さらに後日、保護の様子が市の広報に「ほほえましい話題」として掲載されました) 良かれと思って保護を頼んだはずが、逆の結果になってしまった残念な例です。
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